たきべ野について

特別養護老人ホームたきべ野は、隣接する医療法人篠﨑医院での認知症介護、訪問看護の中で、利用者とその家族の方々に必要な施設として設立されました。1997年（平成9年）頃の認知症の方々は、まだ家族が丸抱えで介護されている状態がほとんどでした。

訪問看護や往診をしていると、介護をしている家族も「夜中に騒ぎ出す」「モノを盗ったと言い始める」「外へ出ていってしまいどうしたらいいか」「たまに来る親戚にはもっと老人を大切にしろと言われる」「寝るひまもない」「一日食事をまかなっている」など次々と苦しさを訴え始めます。患者の状態は大きく変化せず、むしろ経過とともに認知症状は悪化するのですが、介護者も患者と同様に自ら苦しいと訴える場ができるとゆとりが生じてきます。

しかしまたしばらくすると興奮や暴力行為、終日見守りという全介護状態、介護者の減少と高齢化という問題が起こり、訪問介護や往診では対応しきれなくなります。どうしても介護者を休める必要が生じてきたのです。苦しさからの解放と支援、また家庭での看取りと同じように、特別養護老人ホームたきべ野での看取りで家族の負担は軽減します。このように、利用者も家族の方々も施設職員も、互いが「苦しい」と言い合える関係が結べる様な「特別養護老人ホームたきベ野」をめざし、2003年（平成15年）の設立に至りました。

社会福祉法人孝悌会　理事　篠崎 孝